*NAKED*

#25ラスト妄想/部下アリ

*#25ラスト一瞬映ったアリーをガン見したら…
・右手・左肩から腕の途中・顔の左半分は取り敢えず健在だった。
・どーも服を着ていない。
・コマで送って確認したら左側の肩(首の付け根)から背中の中央が赤黒く変色して見える。
・タトゥとそれが被っている部分があるので皮膚の変色と勝手に断定
上記から妄想して捏造しました。

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 潔く身につけた全部を脱ぎ捨てる相手を、ゴロリと寝ころんだ姿勢で男は眺めていた。仮の住処と言うだけあり、室内には何もなかった。今、彼が横になるベッドと、簡素なテーブルと、あとは衣服を突っ込んでおくだけのケースが数個。テーブルに乗る携帯端末には見覚えがある。まだ男と行動を共にしていた頃から使っていたものだ。それを使って、相手は連絡を入れてきた。前置きもなく、ただこの場所のアドレスだけを送り付けてきたのだ。簡潔すぎる指令。何百回、同じ文字の連なりを目にしたか知れない。だから、送信者が誰であるか、一目で分かった。が、直ぐに信じられず、面白くもない悪戯だと、文面を読んでから数分の間は頑なに思いこんでいた。
 本当に潔い。相手は下着すら付けていない。その形(なり)で、テーブルへ寄ると、飲みかけのグラスを掴み中身を一気に呷る。
「ちっ…。」
忌々しげな舌打ち。思わず、どうしたのかと男は訊いた。
「氷が溶けちまってんだよ。」
続けて、部屋の空調が効き過ぎていると文句を垂れ、直ぐに酒が薄まって不味いと、苦々しく言う。
「調節できんのですか?」
「できねぇから腹が立つんじゃねぇか…。」
床へ直に置いたアイスボックスから、手づかみで氷を取りだし、空になったばかりのグラスへ放り込む。残り少ない瓶の中身を、やはり潔く全部グラスへ注ぎ、素っ裸の男は半分くらい喉へ流し込んだ。そして振り返る。シーツの上で、神妙なツラを向けてくる古参の部下へ、お前の腹の中はお見通しだという風な、人の悪い薄笑いを張り付け、サーシェスはこう言った。
「何が訊きてぇ。」
「何がって…そりゃ今日までの諸々を全部訊きてぇっすよ。」
「全部は面倒だな。」
「じゃぁ、取り敢えず何で俺んトコへ連絡したかくらいは、教えて貰いたいっすね。」
「そりゃ、簡単だ。」
「簡単なんすか?」
「ああ、あのポンコツにデータが残ってて、送ったヤツが宛先不明で戻って来なかったのが、テメェだっただけだ。」
「それだけっすか?」
「他にねぇだろ?」
「ないっすね?」
部下はそこで馬鹿笑いを垂れる。偶々捨てるのも忘れていた端末が役に立ったと、腹を抱えた。
 男は他にも訊きたいことはあった。月並みな質問を、あれこれとぶつけてみたいと思う。
「そんじゃぁ、この話は終いでいいな?」
だが、相手が先を制して山ほどの問いは形にならず、男の中へ仕舞われた。
「良くないって言っても、話す気なんかないじゃないすか?」
「まぁな…。」
サーシェスはニヤリと笑い、グラスの残りを飲み干すと、ベッドの脇へ立ち、聞き慣れた台詞を吐いた。
「で、お前はどっちだ?タチかネコか?」
古参の部下は、遠慮の欠片もなく、自分が上だと即座に返した。



 ローションをたっぷり塗った指が二本。後口を和らげてから、狭窄を解している。指の股を大きく開き、仰天して竦み上がる内壁を押し広げた。
「使ってねぇんだなぁ…。」
思わず洩れた独り言を耳ざとく拾ったようで、ゆるく折り曲げた右足が無礼な部下の下肢を直撃する。
「…ったりめーだろうが。」
「痛ぇなぁ。だって隊長が使ってねぇなんて…。」
降りたばかりの足が、今度は無礼者の脛を蹴った。
「テメェは一言…っ…。」
多いのだと詰る台詞は中途で切れる。折り曲げた二本の関節が、腹の中をグルリと摺り上げた所為だった。言葉の終わりは、引きつった喘ぎに変わる。その様を確かめ、男は探り当てた性感を、突くように幾度も刺激した。
 仰向けるサーシェスの股間で、硬くなり始めた性器がビクリと頭を持ち上げる。同じ辺りを指が強く撫でるたび、竿は大きく震えて質量を増やした。一旦、指を抜く。ローションをまた塗りつける。そして窄みかけたアナルへ再度の挿入。数は増やさない。多ければ良いと言うものでもない。拓かせるだけでなく、あちこちに点在する性感を様々に弄るなら、二本が丁度良いのだ。それは何度も行為を重ねて覚えたこと。空白の年月が経とうと、変わらない決まり事だった。
 内部が些細な動きにも反応をみせ始め、股間の屹立から吐き出す体液に白濁が混じる。やりきれない焦れったさが、無意識にサーシェスの腰を動かす。それでも指はそこへ居続け、前立腺の裏へ執着する。どこより歴とした反応を見られる場所。ほんのわずかな凝りを、指は飽きずに弄っていた。
「ぅ…っ…。」
サーシェスの腰が少し浮き上がった。喉の奥から呻きとも喘ぎともつかない音が鳴る。指を中へ埋める男からは、短い呼吸音だけが聞こえる。部屋が暑いからではなく、二本の指を戒める狭さへ、早く自分のイチモツを衝き入れたい願望が、彼の呼吸を荒くするのだ。そこへ竿を射れた途端、この上もなく締め付けてくるだろうと思うだけで、男の屹立はねばつく体液で物欲しげに濡れていた。
 もう我慢出来ないと、男は指を抜き取る。間をおかず、アナルへ押し付ける丸みを帯びた硬さ。ギョッとするほど熱を孕む。その温度と質感を肌で感じ、サーシェスは思わず含み笑いを漏らした。
「掻いてもねぇのに…それか?」
小馬鹿にした言い回し。
「隊長の腹ん中が、ギューギュー絞めてくるからじゃないすか…。」
「待ち切れねぇってか?」
「溜まってんすよ。最近、ご無沙汰だったんで…。」
プッと噴き出し、ならばさっさと射れろと促す相手に従い、男は押し当てたペニスを、躊躇いなく衝き入れた。
「んっ…ぅ…ん…っ…。」
指より遙かに大きな塊が、遠慮の欠片もなく腹の中を掘り進む。一瞬息が詰まり、背が激しく仰け反った。しかし部下は勢いを殺さない。同じ速さ、同じ強さで、奥までを一気に貫いた。
「うっ…テメェ…っ…。」
「隊長……キツイ…っ…。」
不躾な侵入を拒むのは内壁の意思だ。周囲が戦慄き、陰茎を締め上げる。愉悦を凌駕する苦痛。根本まで収まった性器をどうにも出来ず、部下は苦悶に固まり、サーシェスは浅い呼吸ばかりを繰り返した。
 数分の膠着、意識して下腹から力を抜くよう努めたのが功をなす。徐々に引いていく内部の拒絶。部下はゆるみの隙を逃さず、少しずつ律動を開始する。
「おっ…ぁ…っ…そこ…っ…。」
カリの張り出しが抉った場所が、殊の外快感をもたらしたようだ。顎を持ち上げ、背を撓らせ、サーシェスは感じたままを体言する。
「隊長…やっぱ…スゲー…す。」
「…っ…なに…がだ?」
「ケツ…すげ…絞まって…。」
そんなところを誉められて舞い上がるわけもない。通りに佇む立ちんぼの小僧ならいざしらず、もっと別の賛美なら手放しで喜ぶものをと、サーシェスは苦く笑い、馬鹿野郎が…と呟いた。
 調子に乗った兵隊が、欲望にまかせ腰を打つ。深みを狙い、威勢良くペニスが腹の中を動く。みっしりと狭さを満たし、硬さと質量が悦を引き出す。これ以上は無理なほど、張り詰めた竿が、内壁の柔らかさを拡げ擦る。亀頭の尖りは、深みで待ちかまえる性感を衝いた。
「あっ…うぁ…っ…くぅ…。」
「先…出ちまう…かも…っ…。」
がむしゃらに攻め立てる男が、情けない言葉を垂れる。もう小僧と呼ぶには些か抵抗がある相手を、それでもガキが…と罵る。
「隊長…っ……。」
今にも達きそうだと、引きつった声音が訴えた。
「焦んな…っ…。」
両腕が兵隊の肩を掴み引き寄せる。密着する胸と腹。そして硬く張りった腹筋に挟まれるサーシェスのペニス。腰を入れ続ける男の動きが、腹に擦れる性器へ圧と悦を与えた。快感が膨れあがる。絶頂は間近にあり、どちらもそれに手を掛けようとしていた。



 映像モニタからキャスターの声が流れる。壁に切り取られた窓のようにモニタは広がり、今は報道番組を淡々と映していた。SEXの終わったあとの怠さに任せ、男らはそれを見るとはなしに眺めている。古参の兵隊はダラリとベッドで横になり、サーシェスは素っ裸のままテーブルへ向かいグラスを手にする。大写しのキャスターから場面は切り替わり、大勢の人間達に力を込め演説する男が映った。
『連合が連邦へと変わり』
『恒久的平和を…』
『唯一の軍隊である平和維持軍が…』
此まで幾度も同じような台詞を耳にしてきた。人間は平和の二文字を口にするのが尽く好きらしい。決まり文句の羅列へ、会場から割れんばかりの拍手が起こる。次いで居並ぶ軍人の映像。彼らの背後には人型の兵器が立つ。フッと呆れたように鼻を鳴らす兵隊が、平和維持軍か…と呟いた。
 手の中のグラスを口へ運び、サーシェスは中身を流し込む。硝子と氷がぶつかり、硬質な音があえかに鳴った。モニタの中で慇懃に敬礼する軍人の、腐抜けたツラをカメラはゆっくりと横へ舐める。護りに入った軍人達は、生真面目で大人しい飼い犬の目をしていた。
「はっ……。」
今し方兵隊が漏らしたのより、遙かに何かを小馬鹿にした声を吐き、サーシェスはグラスを机上へ置く。乱暴な仕草だった。安っぽいテーブルが小さく軋みを上げた。
「隊長…。」
「あ?」
「連中は本気で一個に固まったんすかね?」
「どうだかな……。」
振り返りもせず、それだけを返すサーシェスの背を、男はじっと見つめた。左肩から腕を飾る彫り物。そして背の半分以上へ広がる、赤とも朱とも褐色とも言えない変色の痕。彫り物はずっと以前から目にしてきた。赤黒い痕は初めてお目に掛かったものだ。兵隊はそれに関して何も訊かない。目を逸らさず、凝視を続け、しかしその意味を問うたりしなかった。戦場に生業を得る人間の背に、また一つ戦いの痕跡が刻まれただけだ。意味があるとすれば精々その程度。だから古参の部下は訊かず、サーシェスも何ら語ろうとしないのだ。
「何時まで続くんすかね…その平和ってヤツは…。」
独りごちるような男の台詞。だが戻る答はない。
 映像へ向いていた背がクルリと返る。シーツの上でだらしなく伸びる男が何事か?と訝しさを顔に張り付けた。今、彼が漏らしたくだらない呟きに、相手が何某かを返すのかと、少しばかり身構える。
「よぉ、次はおまえが下んなれ。」
世界の安寧など無関係な一言。それを垂れた男は、愉しげな笑いを浮かべていた。それは禍々しく、ぞっとするほども愉快そうな顔に見えた。





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