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戒めの記憶4(だったっけ?)

あ、SICKSに続きをウプてきました〜

三連休だったのに(この繁忙期に三日も休みになったのは社内システムのメンテが入ってて仕事にならんから・笑)部屋の本の整理したくらいで出かけたりもせず、あとはサイトをゴチョゴチョ弄ってました。でも愉しかったからよし!でもアレだ…本を山盛りで読めたから全然オッケvこの作家の作品読むとムラムラと何かが書きたくなるってのがありましてね。好きな文体だったり、世界観が大好物だったり、小物の使い方が上手かったり、そーゆーの読むとホントにウズウズしてくる。絵師さんだったら画集とか写真集とか、そんなので同じ気持ちになるのかな?拙者は文字が好きみたいで、文字から色んなパワーを吸い取るらしいよw
あ〜、ただ最近映画行ってないから一本くらい見に行っても良かったかもなぁ〜。
「長州ファイブ」が見たいんねん!
「ジョジョ」て来週末からだよね?

じゃ、またチミチミと続きです

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 標準時間を基準にすると船で航路へ出てから二十日が過ぎようとしていた。途中、給油に立ち寄ったステーションで船外へ降りることはなかったから、伯爵はこの時点で半月以上も大地へ足をつけていないことになる。
『右舷前方、小惑星。着岸ノ場合ハ事前観測ヲ行ッテクダサイ。』
AIが何度聞いても耳に馴染まない音声で言い寄越す。
「大気の有無、生命体の有無を含む観測を開始しろ。着陸可能施設の有無も…だ。」
『惑星へと降りるのか?』
仰天をあらわにした声が伯爵の内で響いた。
「そのつもりだが…?」
『それは興味深い…。此までの頑なさから一転し大地へ降りるとは…。』
その理由を訊かせろと声の主は決まり文句を吐いた。
 愕くのも無理はない。先日給油で立ち寄ったステーションでも伯爵は人との接触を避けている風だった。大概の場合、航路の途中に設けられるそうした施設へ立ち寄る輩は、誘導ビーコンに招かれ着岸し船外へと出ていきたがる。船内の決まり切った空間に飽きているからだし、乗り合わせる面々以外と喋りたいと思う為だし、船が作り出す軽重力では収まりのつかない肉体を大いに動かしたいと望むからだ。ところが伯爵は最小限の接触で燃料を補給すると、まるで逃げるようにそこを離れた。通信だけで他者と言葉をまじえる時、不要に緊張を憶えていたのを声の主も感じていた。だから未だ時期ではないのだろうと察していて、この船が何処かの港へ停泊するのはずっと先かもしれないと考えていた。
 意外だと宣い。何故と問うのは当然だった。
「けじめを付けねばならぬだろう…?」
短い問い返しに真意を読みとり、声は成るほどと静かに言った。
『けじめとはお前らしい。何をしてそう思考したのだ?』
「別段…此と言った切欠があったわけではない…。ただ、何処かで線を引かねばならぬ時が来るのなら、それを今と定めても構わぬと思っただけのこと…だ。」
歯切れの悪さが隠した真意を匂わせる。が、声は殊更にそれを暴くなどせず、了解したとだけ返す事に留めた。
 切欠はあったはずだ。伯爵が本来持ちうる性質の素直さは、生真面目さにも通じる律儀さを有する。思い返せば先日の給油以来、あれほど賢明に続けようとした会話がなくなった。言葉を投げても受け取りはするが、それを投げ返しもせず、無言のいらえで終わらせようとした。思考のただ中で何某かを迷っているのは明かで、つまり怖れる如く人を避けたステーションでの一件が、伯爵にこの決断を促したと言っても良いだろう。それはあくまで推測でしかない。でも声の主はそれをぎこちなく隠した真意と決め、更なる追求を不要と判じたのだ。
 声の主が気配を納めず、ジッと己を観察していると気づきつつ、伯爵はAIからの報告に耳を傾ける。
『大気ノ成分ハ…。』
『生命体ノ有無ハ…。』
『着陸用施設ハ…。』
次々を流れ出るそれらを統合するに、目的の惑星には人と思しき知的生命体は居らず、何かの観測施設が認められるだけで、受け入れる港はないが着陸可能な地形が存在するということだった。
『着陸可能ポイントマデ、三分二十八秒。』
迷いを抱く猶予はない。決断は眼前に迫る。
『決めかねるか?』
声は幾分面白そうな色合いを滲ませる。伯爵は一つ大きく息を吸い込み、それを吐き出すと同時にくっきりとした輪郭の声音で一つづりの意思を形とした。
「着陸の準備を…。」
硬質な音声が了解を伝える。船は自動航行から操舵をAIに委ねたまま、厳かに着陸態勢へと以降した。
『仮に人が其処に居たとして、お前は同じ決を定めるか?』
意地の悪い事を訊く。人が居ないから降りるのかとは、本当に己に宿る声の主は人が悪いと伯爵は芳眉を寄せる。
「人が居たとしても同様に決した…。」
計器に視軸を据えたまま穏やかに返した言の裏側には、暴かれまいとする真意などないらしい。いらえは凛とした響きであった。既に着陸を口にした時、伯爵はそれまでの逡巡を捨てていたのだろうと思われた。
 船は緩やかに降下を開始する。人工音声が大地までの距離を唱うかに発し続ける。伯爵は操舵席に腰を降ろす。船外モニタが薄くけぶる大気の層を映し出した。細やかに震え出す船体。前面より掛かるGは予測の域を超えない。軽い緊張を憶え、伯爵は肘掛けに置いた手をゆるく握り大地へ降り立つ瞬間を待った。


つづく(んだろうなぁ〜)

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