記事一覧

Hazy weather in spring(部下×隊長)

日曜のオンリーの帰りにまだ僅かに桜が残っているのを眺めて、アリーで傭兵部隊で桜でアオカンてネタを思いつきました。
今回の部下は冬コミで出した傭兵部隊本(The Things They Fight)に出てくるオリキャラの古参兵(ドイツ系)カール・ガルデン(37歳)です。



//////////////////////////////////////



 低く削れた壁。それが家だったのか、敷地を隔てる塀であったのか判別がつかない。ただの崩れた石積みの壁だ。もう何の役にも立たない。単なる瓦礫に成りはてていた。
 サーシェスは身を低くし、その崩れた石壁から僅かに顔を覗かせる。警戒しつつ周囲に目線をやった。
ビゥッ!
大気が何かに裂かれる音。ほぼ同時に身を隠す石壁に銃弾がめり込んだ。サーシェスは素早く覗かせた顔を引っ込める。壁に背を預け、腰を落としつつ銃弾の位置を確認した。
 届いた音と着弾までの時間。それで大凡の発射地点を特定。埋まる銃弾の角度を確かめれば、もっと正確な位置がはじき出せる。が、それは無理なのであっさり諦めた。
 ざっと目視での索敵を行った結果、通常の突撃銃や小銃の射程距離内に敵がいる可能性はきわめて低かった。また確実にサーシェスの僅かに覗かせた頭部を狙う精密射撃から考えるに、相手は1km圏内で遮蔽物の影からこちらを狙う狙撃兵。当然ながら得物は専用ライフルに違いない。恐らく光学式スコープを使用している。
 腰を低く落としたまま10mほど横に移動。今し方より原型を留める石壁から、用心しつつ顔を出す。即座の発砲はない。
「…てぇことは、脚付の固定ってこったな…。」
酷く得心し、独りごちる。声に出したのは己への確認も含んでいた。
 頭の中に戦場となる市街地の大凡を描き出す。人型兵器により建物の大半は崩壊。もとより高層建築は一割も存在しない。低層或いは平屋の民家が大多数を占める。
 方角から想定されるのは、サーシェスから見て左前方約1kmにある4階建ての建造物。その2階辺りが怪しい。固定式対人狙撃銃を設えるとしたら、それ以外が思い浮かばなかった。
 目標とする建物に乗り込んで、狙撃兵に数発食らわせるのが最も手堅い方法だ。だが、敵側の残存がどれ程かの情報がない。
「待てよ…?」
なぜ自身がそうした情報を得ていないのか、不可思議な状況に首を傾げた。
 自分の率いる小隊での突入だった筈だ。人型兵器は今回支給がなく、粗方を先発が片付けた時点で乗り込んだ記憶がある。
「なんでどっからも通信がねぇんだ?」
思い出した風に、通信機を探す。通常なら腰のベルトに装着している。左手でその辺りに触れると、確かに小型通信機が在った。手に取り、スイッチを入れる。周波数は5通りを順次移動して使用する。最初の低周波帯から、徐々に高周波へと切り替える。が、お粗末なスピーカーからは、ざらざらという雑音しか流れでない。
「どうなってやがる。」
吐き捨てる言葉。スイッチを落とした通信機を元の位置へ戻す。
「まさか…な。」
率いる部隊がサーシェスを残し全滅と言う状況が一瞬だけ頭を過ぎったが、それを即座に打ち消した。
「あり得ねぇ。」
自嘲気味に笑ったのは、どう考えても残りの9名が墜とされる可能性を思いつかなかったからだ。
 この規模の戦場なら、通信士は車両で情報戦に従事。残る兵士を2班に別ける。サーシェスと三人が陽動、副隊長のポジションを担う古参のガルデンが四人を率いて実動となる。仮に実動部隊が全滅の憂き目にあっても、最悪通信士は残る。いや、残らなければ可笑しい。車両は通信可能域である、戦場から1km弱離れた林間部の端に待機させている。
 サーシェスらは南から進行。敵兵力は北側を陣取り、敵増援は北東から進軍だった筈だ。ここより遙か南の通信拠点から墜とされる確率などゼロに等しかった。そうでなければ、その位置を確保しない。だから首を傾げた。
 自身が単独なのは仕方ない。陽動の為、三方に散ったからだ。サーシェスは中央を行った。2名の兵は東西へ散らばる。出来るだけ賑々しく手投げ弾をばらまき、まるで大勢が突撃をしかけた風な撹乱を狙った。稚拙なやり口だ。普通ならこんな馬鹿らしい作戦はとらない。が、今回ばかりは有効と踏んだ。敵側が寄せ集めの警備隊だからだ。
 1部に正規軍が関与しているにしても、実際にここを仕切るのが民兵なら素人とみなして差し障りなかった。それを相手に己独りしか残らなかったのかと思う。
「やっぱ可笑しいだろうが。」
どう考えを巡らせても得心どころか、1ミリの可能性すら浮かばない。
「どうなってんだよ。」
焦れた風に呟き、奥歯をギリと噛みしめた。
 珍しく眉間に皺を寄せていたのは3分くらいだった。自身が身を隠す壁を急にキョロキョロと見回す。5mほどずれると、そこだけ崩れず2mほどの高さを保っている部分があった。サーシェスはまた低さを維持して移動する。
 一応ごく近い周りを警戒したのち、すっと立ち上がる。壁はサーシェスの頭より幾分高さがあった。相変わらず攻撃はない。そこで壁に背を押しつけ、突如ズボンの前を開くと、盛大な放尿を始めた。
 頭に血がのぼった時はこれに限る。頭や躯が一つ事に凝り固まり、先を読めない時にも有効だ。不要なものを捨て、スッキリと気持ちを建て直す。サーシェスの奥の手はこれだった。
 小便を飛ばしながら、顎を持ち上げ空を見る。ぼんやりとした薄曇りで、何とも景気の悪い色味だ。晴れるでも降るでもなく、ただ間抜けに白んだ鼠が広がっていた。
「しょうがねぇか…。」
もそりと言う。
「取りあえず高ぇトコ押えとくか…。」
竿を軽く摘み、小便の雫を払う。そのまま野戦服のあちこちに突っ込んである、残弾を確かめた。有り余るほどはない。が、足りなくて困ることもない数だ。
「1kmとちょいだしなぁ。」
もしもあの4階建てに行く途中、50人が銃を構えていたなら、50人を撃ち殺せば良い。100人いたら100人に銃弾を撃ち込むだけの話だ。
「ほんじゃ、行くか。」
手にした自動小銃を腰だめに構え、サーシェスは瓦礫の影から身を躍らせた。




 崩れた建物が道に石塊となり転がる。場所によっては先を塞ぐ瓦礫が横たわる。それらをかわし、時に盾として、サーシェスは入り組んだ街の通りを北西に向けて進んだ。
 不思議なことに、物陰から飛び出した途端、だだだ…と連射を食らった。寸でで逃れたが、明らかに自分を狙っている。
「…ぁんだぁ?」
家の残骸に転がりこみ、敵の動向を探る。さっきまで近場は無人に思えた。ところが、気配がする。それも大勢だ。
「どっから湧きやがった。」
まるで地べたから敵兵が生えてきたかに、辺り一面から殺気がする。
 このまま膠着に持ち込まれるのは拙い。咄嗟に地面を蹴り、低い姿勢をとりつつ駆け進んだ。あちこちから頭と銃口が覗く。進路を確保する為、その方へ当りを付けトリガーを引いた。
タタタッ…。
自動小銃から三発の連射。それは見事に敵兵の頭へたたき込まれた。続けてその僅か先からこちらを狙う人影に発砲。ドサリと人の重さが地面に墜ちる音が鳴った。
 腑に落ちない。こうも上手く当たるのは可笑しい。が、実際放った全部が敵を骸に変えていく。サーシェスは不可解だと思いながらも、通りの両側へ銃弾をまき散らしつつ、どんどんと駆けた。
 滅多にないが、希にはある。慎重に照準を合わせもしない発砲が、嘘のように敵を倒すことが、今までに幾度かあった。それが今らしい。ならばこの好機を逃す手はない。
 スピードを殺さず、存分に駆けながら、サーシェスはどんどんとトリガーを引いた。あまりに呆気なく敵兵が沈む。訝しく感じたのは最初だけで、こうなると愉しくてたまらなくなった。
 子供だましの射的さながら、本当に50人いようが100人いようが、物の数ではなくなっている。途中、撃ち殺した兵から得物を奪う。当然、携帯する予備弾もすっかり頂いた。
 1kmの半分ほど進んだ頃には、身を隠すのも忘れ、声に出して馬鹿笑いを垂れながら、サーシェスは銃弾をばらまいて疾走した。
 目標の建物がぐんと大きく見えてくる。残りは400m弱。若干息は上がっているが、それくらいを詰めるには充分すぎる余裕があった。
ビゥッ!
覚えのある音が大気を鳴らす。それが間近だと感じた瞬間、右の脇腹に鋭い衝撃を覚えた。
「クソッ!」
速度を落とさず移動しているのだから、ロングレンジの脚付からは逃れられると踏んでいた。が、脇腹の1部を抉られた。中距離の手持ちもあったのだろう。ここまで来て、とんだ失敗だと舌打ちする。
「ん?」
ところが何故だか激痛が無い。その辺りを掌で探る。ぬるりとした感触があった。やはり一発食らっている。でも欠片も痛まない。
「痛くねぇ。」
そう確信した途端、笑いが溢れた。
 愉快で、面白くて堪らなくなると、そう言えばヤラれても痛くも痒くも感じなくなる。全部が終り、他者に指摘され、初めて自分が血まみれだと気づいた覚えがあった。あの時と同じだ。そう思ったら、地面を蹴る両足がぐんと軽くなり、前にも増して勢いよく前進を続けるサーシェスは、気が振れたように、トリガーを引き続けた。




 「あぁ……?」
尻の辺りを蹴られ、サーシェスは頼りない声を発した。
「こんなトコでよく寝られるモンだ。」
呆れた声が真上から落ちる。
 瞼をこじ開けると、視界いっぱいに男の顔が映った。
「全部オレに丸投げして、隊長殿は昼寝か?」
短めの髪は暗い灰色。厳つい顔をニヤつかせ、カール・ガルデンは仰向けで寝転がるサーシェスの顔を覗き込んでいる。
「あ~寝ちまってたか…。」
「ぐっすりとな。」
「てめぇが起こさなけりゃ、俺一人で全部ぶっ殺してたのによぉ。」
「何の話だ?」
「市街戦で、こっちの弾が全部敵さんに当たるって話だ。」
「夢か?」
「まぁな。」
起き上がる気配のないサーシェスは、仰臥したままヘラヘラと笑っていた。
 その日の朝方に終結した戦闘も、小さな地方都市で行われていた。夢と異なるのは、籠城した反対勢力に対する包囲戦が繰り広げられていたこと。丸二日にわたり、サーシェスらの部隊を含む体制側が、立てこもった部隊へ止めどない砲撃を続けていた。
 諦めの悪さが戦闘を長引かせ、結局サーシェスらは、寝る間もなく銃を撃っていたのだ。相手が白旗を揚げたのが、今朝の夜明け近く。一旦、後方へ撤収した部隊には雇用側への報告義務があった。隊長であるサーシェスは、古参のガルデンにそれを押しつけた。
 七面倒臭い報告を終えたガルデンが戻ったところ、仮設本部の外れ、大きな古木の根元ですっかりとサーシェスが寝こけていた。
「他の連中は?」
周りには誰も居ない。
「先に戻りの車に乗せた。」
「で、一応はオレを待ってたのか?」
「…ったりめぇだろうが?」
「隊長の鏡だな。」
「うるせぇ。」
まだ寝起きでぼんやりとした面のサーシェスが、そう言って緩くガルデンの脚を蹴った。
 さらさらと弱い風が吹く。見上げる空は夢と同じに淡く曇っている。また寝こけてしまいそうな曖昧な表情で、起きる素振りをみせないサーシェスにガルデンが訊く。
「つまらなかったんだろう?」
「なにが…。」
「ずっと一所から撃つばっかりで、溜まってんじゃないのか?」
多分そうだろうとサーシェスも思う。だから今し方の夢で、ああも駆けて、銃弾をばらまいて、撃ち殺して、愉快な気持ちになったのだろう。
「あんなのは滅多にねぇよ。」
ただそれだけをサーシェスが言った。何の話だ?とガルデンが訊ねても、サーシェスはぼやっとした顔で何も応えない。
 でもガルデンは直ぐに察した。夢の中で暴れ回ったのだろうと考える。
「愉しかったか?」
だから短く訊いた。
「馬鹿みてぇに愉快だったぜ。」
だらしなく寝転んだサーシェスが、随分と残念そうな面をした。
 傍らに突っ立っていたガルデンが、不意に腰を落とす。サーシェスの顔に自分の面を寄せ、にまにました笑いを貼り付ける。
「こっちも溜まってんだろう?」
言いながらサーシェスの股間に手をやった。掌でその辺りをやわりと掴む。
「まぁな。」
勃起こそしていない。が、伝わった感触は、幾分凝り始めたペニスのそれだった。
「次の輸送便まで間があるからな。」
戻る時刻を確認してきたガルデンは、股間に宛がう手を動かし、サーシェスの性器をゆるゆると捏ね始めた。




 散々捏ね回した末、引き出したサーシェスのペニスはしっかりと形を為していた。それを握って強く扱く。裏筋に親指を宛がい、ぐいぐい滑らせると、間もなく亀頭の割れ目からカウパーが染み出した。雁首を輪にした2本の指で絞り、何度もそれを上下させ、先端の割れ目に指の腹を擦りつければ、とろとろとした体液が溢れて竿を滴る。
 滑りを助ける油性の持ち合わせがなかったからと、ガルデンはそれを代用に、アナルと腹の中を存分に緩めた。
「ん…ん…ぅ…。」
唸るような呻きが、サーシェスの呼吸に混ざり始めると、場所も気にせずガルデンはズボンを下ろす。
 仰向けるサーシェスの両足を高く抱え上げる。存分に慣らした尻の穴へ、すっかり熱くなった先端の丸みを押し当てた。
「おぉ…っ…ぅ…ん…。」
たいした加減もなく竿を衝き入れると、サーシェスが苦しげにくぐもった声を漏らした。
 ずぶずぶとペニスを埋める。わらわらと震える腹の内側が、陰茎に纏わり付いて奥へと引き込んだ。
「ぅ…っ…てめ…っ…。」
無遠慮な挿入にサーシェスが文句をつける。
「たま…ってんの…ぁ…てめ…っだろうがっ…。」
「バレたか…。」
弾む呼吸と薄笑いが一緒に零れた。
「ばればれ…っ…だ…。」
サーシェスも笑おうとしたが、それは叶わなかった。奥まで届いた先を周囲に強く擦られ、情けない声が短く漏れただけに終る。
 抜き射しの間がみるみる速まる。ガルデンの抽挿はまるで喧嘩腰だ。引き抜く直前まで腰を手繰り、硬く張り詰める竿をたたき込むかに奥へと射れる。
「ツ…ぁ…く…ぅ…。」
カリの張り出しが、性感を強かに擦るらしく、サーシェスはだらしなく開いた口から、喘ぎとも苦鳴ともつかない声を止めどなく吐いた。
 弾力と質量が腹の中を矢鱈とかき回す。快感は熱となる。それは血流に乗ってサーシェスの股間に集まる。充分勃ちあがるペニスは、腹にも付くばかりに反り返った。
 ガルデンが激しく腰を打つ。
「あっ…ツ…ぁ…くそ…ぉ…。」
サーシェスの脇腹が痙攣めいて震えた。追い打つかに、ガルデンは奥を攻める。
「お…ぁ…やべ…ぇ…そこっ…。」
聞こえるサーシェスの訴えと、抱える両足の硬直から、ガルデンは了いを予感した。
「出すか…?」
「ぁ…っ…出…っる…。」
動きを止めず、ガルデンが更に訊く。
「ケツだけで達くか…?」
「だ…っ…ア…無理…ぁ…。」
「ダメか?」
「握れ…ぅ…ぁ…竿…く…っ…。」
抱えた両足を下ろすと、ガルデンはサーシェスの上に伏せ、腰を打ちながら片手でびくびく震える性器を握った。
 溜まっていたのはお互い様だったらしい。大した間もなく、握ったサーシェスのペニスが喘ぐ風に震えた途端、濁った体液を惜しげもなく吐きだし、ガルデンも腹の収縮に搾られ、誘われるように射精した。
 サーシェスの横に転がり、ガルデンが満足げなため息を吐く。
「ありゃあ何だ?」
すぐ隣りからサーシェスの惚けた声が訊いた。
「どれだ?」
「その木にくっついてる白いアレだ。」
ガルデンは古木の枝を見た。
「花だろ?」
「ずいぶんと情けねぇ色だな。」
薄く曇る空と、淡く白んだ細かな花。はっきりとしない色の取り合わせだ、不景気な花だと、サーシェスは文句を垂れた。
 その時、低い丘の斜面を強めの風が吹きのぼる。ざっと周囲の草が鳴った。
「けっこう派手じゃないか、サーシェス。」
風に煽られ、枝から無数の白い花弁が散る。まるで雪が舞うようだ。
「まぁ、これなら悪くねぇな。」
舞い踊る細かな花弁を眺め、サーシェスはもう一度、悪くねぇ…と呟いた。




end